北陸電車旅~その6~見張塔からずっと。 [ちょっとおでかけ鉄]

 旅もあっという間に四日目。今日5月11日は、東京に戻ります。昨日はフライング気味に、ちょこっと富山地鉄の鉄道線をかじりましたが、今日は時間の許す限り、鉄道線を満喫する…予定。
 例によって朝6時に目が覚めてしまいました。ホテルの部屋にいても所在ないので、カメラを持って外に出ます。
 今日も空模様はぱっとしない。夜半にかなりの雨が降ったのでしょう。路面にはあちこちに水たまりが残っています。暫く待つと、ヘッドライトを煌々と光らせながら、市内線の7000形電車がやってきました。
01市内線.JPG


 まだ6時台というのに、市内線の電車はけっこうな頻度でやってきて、早出の勤め人や朝練? の高校生を乗せては走り去っていく。
02雨は上がって.JPG


 昨日の反省があるので、近くのコンビニでビニール傘と合羽を購入。ホテルに戻りY君と合流、改めて身支度を整え、歩いてすぐの富山地鉄「電鉄富山」駅へ向かいます。 朝のラッシュの電鉄富山駅の発車案内板。たった45分の間に、これだけの電車が発着する、都会の電車顔負けの列車頻度。。
04発車時刻表.JPG


 とりあえず、一番早い電車で隣の稲荷町へ向かおうと待っていると、嬉しいことに朝一番からこの顔に出会えました。14720形、昨日稲荷町で昼寝していた10020形と同じ顔ですが、こちらは1M方式のモハ14722+クハ172の編成です。
05朝からこの顔に.JPG


 途中混雑で到着が若干遅れ…なんて構内放送していたのですが、到着した電車からはこんなにたくさんの乗客が吐き出されてくる。
06たいしたラッシュ.JPG


 7時34分。14720形上市行きに乗車すると、すぐに発車。わずか2分で稲荷町。
 ここで、朝のラッシュ時だけに運用される10020形の3連編成を狙おう、というのがY君の思惑です。この電車は「急行」表示を出した10035+10036かぼちゃ電車。
07急行10035.JPG


 「あっちだった!」Y君の素っ頓狂な声が響いて、見れば不二越・上滝線のホームから電鉄富山に向けて出発した電車が、なんと10020形の3連編成。
08上滝線に.JPG


 3連は朝ラッシュの輸送力列車だから、当然本線を走る、との先入観でそう思い込んでいたのが盲点でした。岩峅寺を7時15分に出て、不二越・上滝線回りで電鉄富山に7時44分に着く電車に、3連編成が充当されているようです。3連編成は電鉄富山に着くと、回送で稲荷町入庫、とのことなので「しょーがない、駅の外に出て、回送をねらいますか」

 その不二越・上滝線からどっと吐き出された高校生たちが、地下道をくぐって本線下りホームへ。そこにやってきた14722の電鉄黒部行きに乗り込みつつ「朝っぱらから写真撮ってる変なおっさん」と一瞥。ちょっと圧倒されます。
09JKたちと14722.JPG


 改札を出て、線路に並行する道路で待っていると、3連編成はすぐに電鉄富山から戻って来ました。踏切の先の渡り線で上り線に入り…。
10_3連が戻ってきた.JPG


 さらに分岐して入庫線へ。留置線の入り口には車両洗滌機が設けられています。右側の線路は不二越・上滝線。
11洗滌機を通り.JPG


 いいなぁ、愛嬌ある顔だなぁ…。
12_10025顔アップ.JPG


 この後3連編成は、昨日見たように不二越・上滝線ホームの目の前の「定位置」に入庫。
 その不二越・上滝線ホームから14760形14773を先頭にした電鉄富山行きが発車します。よく見ると、この電車も3連?
13_14773これも3連.JPG


 こちらも後尾には、この顔のクハ173がぶら下がっておりました。
14後尾は173.JPG


 それにしても、朝の稲荷町は次から次へと電車がやってくる。顔も塗色も4通りずつあって、飽きません。
 不二越・上滝線ホームの10045。
15_10045.JPG


 本線はこの先、単線となるので朝ラッシュ時はすれ違いが数多く見られます。
 かぼちゃ電車10043と10035。
16_10043+10035.JPG


 雷鳥色の14761と14763。
17_14761+14763.JPG

19_10039+172.jpg


 ついにはこんな組み合わせまで。もともと2編成しか無い元西武のレッドアロー16010形。左はノーマルタイプの16012+16011編成。右は昨年末、リニューアル改装されたばかりの「アルプスエキスプレス」16014+16013編成。
20_16014.JPG


 アルプスエキスプレスは、平日は特別車両の中間車サハ(クハ?)112を抜いた2連で、一般車に混じって運用されているそうです。せっかくだから、この電車にも乗ってみたいな? …というわけで、朝ラッシュも一段落した稲荷町から移動することにして、9時ちょうど発、普通・立山行きで戻ってきたアルプスエキスプレスに乗車します。
21_16013立山行き.JPG


 16013号の運転台。通常はワンマン運行のため、乗務員室扉は開放されています。
22_16013運転台.JPG


 温かみのある茶系で統一された車内。大きなセンターテーブルが備わったクロスシート、そして木張りの床…。
23_16013車内.JPG


 これで「普通電車」。もちろん私達も、通常のきっぷだけで乗車しています。こんな電車で通勤、通学できる利用者は幸せだなぁ。
 つかの間の観光列車気分をあじわいつつ、電車は富山の郊外へ。空は雨雲が垂れ下がり、どうやら雨も降りだしたよう…。
24_雨雲は依然.JPG


 このまま終点の立山まで乗り続けたい…のですが、僅か10数分の乗車で、電車は本線と立山線の分岐駅「寺田」に9時14分到着。ここで下車します。
25_寺田に到着.JPG


 しかし…この駅の、なんというたたずまい…。
26がが〜んこの駅.JPG


 本線と立山線は、駅の富山方で分岐。それぞれ2線の線路は、お互いに離反するようにホームごとカーブを描いています。本線と立山線の下りホームは独立して、真ん中の本線、立山線の上りホームはくさび形の線形の真ん中に広々した一面がとられています。
27かつては信号扱所.JPG

 その中央に、いまは使われていないらしい、瓦葺の立派な駅事務室が建っています。
 なんといっても特徴的なのは、屋根から突き出した「見張り塔?」の存在。
 かつては信号扱い所として使われていた、と何かで呼んだ記憶がありますが…。

 立山線の上りホーム(立山線は右側通行)に9時27分発電鉄富山行きが到着。一編成だけ元京阪の特急色に塗られた10030形。鳩のマークもしっかり再現されてます。
29立山線ホーム10033.JPG


 電鉄富山方。4線の線路は一本にまとまり、次駅の越中舟橋へ向かいます。
30電鉄富山方10034.JPG


 雨は小粒だけど、しとしとと降り続いている。気温もさっぱり上がっていく気配がありません。こんなこともあろうかと、傘と雨合羽を準備済み。早速着用して…あれ、朝方富山駅前の全国チェーンのコンビニで求めた雨合羽は、着用前から袖の部分が縦に30センチほど裂けちゃっている驚きのクオリティ…。ま、いいか、これでも防寒にはなるでしょ。

 雨の中、駅の外に出てみます。どこまでが鉄道用地で、どこまでが道路なのか?隔てる柵もなく、そういえば国鉄だって、昔は地方に行けばどこもこんな感じだった…。こじんまりしたローカル線の分岐駅のようですが、張り巡らされた架線が、歴史ある「電鉄」を主張しているようです。
31駅の外に.JPG


 9時43分、14771+14772の本線、電鉄富山行き。
32_14771.JPG


 そういえばY君が、もうじき特急がやってくる、と言っていたな。
 望遠で雨に霞んだ上市方向を見ていると、14760系の2連がやってきた。なんだかヘッドマークがついているようだぞ。
33特急かな.JPG


 寺田に停車、すぐに発車していく9時52分「電鉄富山行き」の特急…。
34客扱いを終えて.JPG


 と、思ったら、私がカメラを構えている踏切のすぐ手前、私の目の前で停まってしまった。なんか私、悪い事しちゃったかな?
35踏切でストップ14765.JPG


 ビクビクしてたら、運転士さんはブレーキハンドルを抜いて席を立つと、そのまま後方へ…エンド交換? 
 なんだ、よく見れば、特急のヘッドマークは「アルペン号」。宇奈月を出発、富山には向かわず、手前のスイッチバック駅の上市と、ここ寺田で、僅かな間に2度もエンド交換して立山線に入り、立山に向かう「アルペン特急」じゃないですか。
 この列車が運転されるのは4月半ばから11月一杯まで。冬場は同じスジで宇奈月発電鉄富山行きの特急になるので、駅の時刻表をよく見なかった私は、富山行きだとばかり思っていたのでした。

 エンド交換を済ませて立山線下りホームに進入するアルペン特急。立山線上りホームには、いつの間にか上り電鉄富山行きが到着していて、富山方面に向かう乗客は、同一面ホームで乗り換えられる、絶妙のダイヤ構成です。
36バックして立山線へ.JPG


 僅か2分の接続で、9時54分に発車した14763+14764の電鉄富山行き。
37富山行きが出発14763.JPG


 こうして見ると、この電車もいいなぁ…。フタ付きのタイフォンがいかにも雪国の電車らしい。M+M’の全電動車編成で、2両ともパンタを装備。通常は偶数車側の「前パン」を上げているけど、冬場は両方のパンタを上げて走るそうで…。

 …なんて具合に、電車が来るとアドレナリンが放出されるのか、どうってことないんですが、電車が途絶えると降り続く雨と上がらない気温に、カラダが冷えてきます。
「飲み物の自販機『冷たい』しか売ってないんですよ、富山の人は『暖かい』を飲まないんですかね?」Y君が憮然とした表情でそういう。「ちょっと暖かい飲み物、探してきます」とどっかに消えちゃいました。

 10時10分、すっかりお馴染みになった「かぼちゃ電車」。10039、電鉄富山行き。
38雨に映える10039.JPG


 小糠雨のような降りですが、ときおり視界が遮られるほどの雨が、断続的に続きます。10時20分、宇奈月温泉行き14771+14772。
39雨は激しく14771.JPG


 そういえば、昨年暮れ公開された映画『RAILWAYS 2』の舞台がここ富山地鉄だったのは、皆さんご存知かと思いますが(私はまだ見ていないんです。スイマセン)。
 映画のHPに掲載された写真を見ると、寺田駅の上市寄りのこの場所からは、天気がいいとバックに立山連峰が迫って見えるらしい(10時32分、電鉄富山行き10031+10032)。
40立山の山並みが10041.JPG


「山が見えないでちょっと残念だねぇ」「でも雨には雨の風情があるし、いいじゃないですか」温かい飲み物が見つからなかったらしく、手ぶらで戻ってきたY君が言う。
「それにホームラン級の風景写真を狙うなら別なんですが、今回みたいに車両のパーツや下回りを撮らなければならないときって、ピーカンより光がフラットな曇りや雨のほうが具合がいいんです」
 なるほど、仕事で写真を撮るのも大変なんだなぁ…。そういえば、今回の旅では私自身、「逆光だぁ~」なんてことも一切気にすることなく、来た電車にカメラを向け、無造作にシャッターを押してます。私みたいなズボラには、このほうがいいかもね…と前向きに考えることにしましょう。

 ディタイムの地鉄電車は、地域の年配の方々の足。
41高齢者の足.JPG


 というわけで、10時42分滑川行きの電車で先に進みます。
 でもよかったなぁ、寺田駅。
28わくわく風情.JPG


 また是非来てみたいものです。こんどは冬場の天気のいい時に…。
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Cedar

稲荷町も、寺田も、若造の時に訪れた頃の佇まいが濃厚に残っていて鼻がツーンとして来ちゃいました。
立山連邦をバックに撮影した時のこと思いだします。
by Cedar (2012-06-02 20:51) 

gardenwalker

こんばんは
寺田駅、10年位前に行きましたが
いい味出していますよね~
また行きたくなりました♪
by gardenwalker (2012-06-02 21:30) 

maipenrai

Cedarさん
 改めて去年4月の御ブログの「北陸シリーズ」を拝見させて頂きました。ツリカケ時代の福鉄や地鉄、素晴らしいですね。今の姿を見て、かつての情景の写真を拝見し、いろんなイメージが湧いて来ました。ツリカケ時代の福鉄、射水線新富山の情景、私が今回すっかりハマってしまった2枚窓の地鉄14720形(10030形)も、オデコ3灯だったんですね~などなど。なにも知らないままに、当時私が書いた頓珍漢なコメントに改めて冷や汗も…。そうそう、寺田駅の側線に転がっていた「除草剤散布車」、今回写真を撮りました。次回更新でアップいたしますね。

gardenwalkerさん
 雪をいただいた立山連峰を見たかった…と思う反面、風景写真のセンスは、gardenwalkerさんを筆頭に、どう逆立ちしてもかなわない私…考えてみりゃ雨降りでよかったかも…。寺田駅のあの雰囲気、また味わいにいきたいですね。

プントさん
フジトモさん
モボさん
 niceありがとうございます。
 
by maipenrai (2012-06-02 22:18) 

サットン

ローレル賞ホルダーの14760系、中小私鉄としてはなかなかの意欲作だと思うんですが。今後地鉄オリジナルの新車の登場は期待できそうもないですねえ・・・・。
アルプスエキスプレスも魅力的ですが、どうもPRが苦手なようですね。
by サットン (2012-06-03 15:58) 

maipenrai

サットンさん
 私の世代的に10020形や14720形につい目が言ってしまいますが、14760形,イイ電車ですね~。何編成か地元の京成に攫っていって、使えないシティライナーの代わりに、座席指定車として一般特急に連結したらな~(ゲージが違うって!)、なんて妄想したり(笑)。アルプスエキスプレスも、あの電車に特別料金なしで乗れるなんて、関東人には考えられません。

あるまーきさん
 niceありがとうございます。あるまーきさんに地鉄ネタを見られるのは、ちと恥ずかしい…。

xml_xslさん
 niceありがとうございます。

tommy8さん
 はじめまして! niceありがとうございます。



by maipenrai (2012-06-03 18:23) 

nexus6

富山シリーズ、大いに刺激を受けております。 今年の夏は小生も北陸へ!!
by nexus6 (2012-06-04 07:16) 

maipenrai

nexus6さん
 おおっ、いいですね~。当方も、帰ってきたばかりなのにまた行きたくなってます。ま、そうしょうちゅう出かけられるワケもないんですが。
 ご健闘をお祈りしています。

ひもブレーキさん
シュウチャンさん
 niceありがとうございます。
by maipenrai (2012-06-04 16:44) 

あおたけ

かぼちゃカラーへの塗替えが進む地鉄ですが、
思ったよりも雷鳥カラーが残っていて、
ちょっとホッとしています。
雨がそぼ降る寺田に佇む姿、がいい味出しています!

元西部のレッドアローも頑張っていますね!
本家の西武ではNRE10000系をこの色に塗って
「レッドアロークラッシック」として走らせていますが、
やはりこの元5000系を見ちゃうと貫禄が違いますね(笑)。
by あおたけ (2012-06-04 19:43) 

京葉帝都

寺田駅は配線といい駅舎といい本当に素敵です。列車の乗り換えも構内踏切を渡るだけなので便利ですね。立山線と上滝線が合流する岩峅寺駅も同じように方向別にホームがあり、貫禄のある駅舎が建っています。


by 京葉帝都 (2012-06-09 19:58) 

maipenrai

京葉帝都さん
 立山線方面と、黒部から宇奈月方面は、今回行けなかった場所です。富山地鉄自体、本気で見て回る気になれば、一週間あっても足りないんじゃないかと思えるほど、奥の深さを感じますね。
by maipenrai (2012-06-09 21:50) 

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