北陸電車旅~その3~2社3線福井の朝をチョイかじり [ちょっとおでかけ鉄]

 東京を発って二日目、福井の朝。
01福井駅前.JPG


 今日は5月の9日。連休明け、土日も挟まず、平日に三泊四日の旅ができるのは、同行のY君も私も、仕事的にはフリーの立場だから…。私の場合は、半ばリタイア…というか「そろそろお引取りを…」という周囲のビミョーな空気を感じる今日この頃であるんですが…。

 暗い話はともかく、平日に電車旅ができるのは、正直ありがたい。私が見たいと思っている電車は、基本、年代物の古い電車です。どこへ行ってもベテランの車両というのは、一日中目一杯稼働していることは少なく、朝夕のラッシュ時に限定的に運用されている場合が多いんですね。しかも日曜休日は運用が減るとか車庫でお休みとか…。このあたり、私の地元・京成の3300形なんかもおんなじですが、全国的にも「古い電車を撮るなら平日朝を狙えの法則」が存在していそうです。

 まぁ、年をとったせいで、早起きは苦でもない。今朝も6時には目が覚めてしまい、投宿した駅前のビジネスホテルのサービス朝食(7時から)をそそくさと平らげ、街に出ます。 昨日に続き、福井鉄道福井駅前の電停に。880形の越前武生行きが停まっていますが、この電車が出てしまうと…、
02_885+886.JPG


 次の電車は45分近くもやってきません。流動が少ないのか、あるいは市役所前スイッチバックの煩雑さを嫌い、車両の運用効率を上げるためなのか、朝の福鉄は、田原町-越前武生を駅前に立ち寄らずに直行する運用になっているようです。
03_45分電車はこない.JPG


 そんなわけで市役所前まで歩きます。今日も曇り空。すぐに雨が降り出すような気配はないけれど…。

 市役所前の交差点では昨日の夕方撮影しているので、200メートルほど武生寄りの足羽川の橋の上にやってきました。タイミングよく、610形2連の田原町行きがやってきました。
04_610が来た.JPG


 横から見ると、車内には立ち客も多く、けっこうな乗り。15メートル級鉄道車2連でこの乗りだと、全長20メートルの連節車ではちと厳しいかも知れませんね。
05けっこう乗ってます.JPG


 後追いを撮ろうと市役所前交差点方向にカメラを向けると、おお、200形がやってきた! 
06_610と202の離合.JPG


 朝のラッシュのクルマでで混雑する路面の併用軌道上で、高床の鉄道形車両の離合。迫力に思わず息を呑みます。ホテルでがっつり朝飯を食べて、遅れて出てきたY君はこのとき、交差点の角にいたはずですが、うまい具合に撮れたのかな?

 200形の方向幕は、途中の「神明」行き。
07_202は神明行き.JPG


 時刻表を見ると、符合する折り返しの電車がないので、そのまま武生に回送してヒルネ…の運用? 市役所前の交差点で、Y君と合流。そんな推理を話し合っていると…。
 またしても200形がやってきた。
08_201もやってきた.JPG


 昨日は走行する姿を撮影できなかった201編成。多少クルマにかぶられちゃったけど、まぁヨシとしなければ…。
09_201も田原町行.JPG


 市役所前から、福井駅前方向を望む。市役所前のクルマの交通量、人の賑わいに較べると、なんともまったりとしています。
10駅前通りは閑散.JPG


 Y君は車内、運転台などの撮影ミッションで、折り返しの200形電車に乗るという。私としても望むところで、市役所前の武生行きホームに移動します。

 先に行った610形が来てから、200形が来るものだとばっかり思っていたら、アレ、200形が先に来ちゃった??? よくわからないけど、とにかく乗車!
11先に201が戻ってきた.JPG


 200形の車内。なんの変哲もないセミクロスシートですが、子供の頃はセミクロスというだけでポイント10倍! ってくらい憧れておりました。
12_201車内.JPG


 床の高い車内から見る併用軌道の風景は、路面タイプや低床タイプとは全く違った趣き。
13片側3車線.JPG


 このマスコン(見づらいけど)やブレーキ弁、計器類の配置具合…昭和30年代の私鉄高性能新造車の特徴そのまま…ガキの頃の私が夢中になって運転台にかぶりついていた頃を思い出させてくれます。
14_201運転台.JPG


 懐かしさに陶然とするうち、電車は赤十字前に到着しました。ここで下車。もう一度特徴あるステップを写真に収め…。
15ステップは高い.JPG


 武生に向かう200形を見送ります。
16_201を見送る.JPG


 200形が去って、まもなく市内方向の踏切の警報機が鳴る。なにが来るかと見ていたら、610形が「回送」の方向幕を出してやってきました。
17_601の回送.JPG


 駅に着くと…運転士さんは電車から下車して、駅の事務室に入っていってしまった…。なんだかよくわからないが、福鉄の朝の運用は、奥が深そうで面白いです。
18運転士は下車.JPG


 さて、昨日は武生からこの駅まで乗っているので、折り返し田原町まで乗れば福鉄全線完乗達成…、アレ、待てよ、市役所前と福井駅前の間は乗ってないや。
 と思っていたら、やってきた田原町行きはラッシュが終わったせいか、福井駅前経由の方向幕を出していました。ラッキー!
19_770形田原町行き.JPG


 そんなわけで、乗車したまま2度のスイッチバックを体験、福鉄線完乗を果たして田原町に到着しました。
20田原町入線.JPG


 ね、ホームは一線しかないでしょ? さっきの610と201は、どこで運転順序を入れ替えたんだろうか?

 しかしそんな疑問はすぐにどうでもよくなってしまった。なにしろこの駅の佇まいときたら…。
21田原町情景01.JPG


 思わず、スゴイ、スゴイ! と声が上がってしまう。
22田原町情景02.JPG


 まるで映画のセットに迷い込んだような…。
23田原町情景03.JPG


 ご承知のように、ここ田原町は福井鉄道と、えちぜん鉄道の接続駅。どちらも線路は片面一線。地続きのお互いのホームは、平面ですぐに乗り換え可能なんですが、その間は軒を接しているのか、ひとつづきの建屋なのか、林立する木の柱と屋根で覆われ、その周りを使われなくなった事務室など埋めている。その薄暗い中を覗きこむと、謎めいた物体が転がっている、ちょっとしたラビリンスなのでした。
24田原町情景04.JPG


 突然踏切の警報機が鳴り始め、えちぜん鉄道の福井行き電車が接近。福鉄のホームのはずれに急ぎ、待ち構えていると、やってきたのは2扉の「阪神顔」の電車。
25えちぜん2101形.JPG


 京福時代はモハ、えちぜん鉄道に変わり頭の符号も「MC」となった2101形です。この電車も今ではラッシュの時間帯の限られた運用、と聞いていたので、思いがけず走っている姿を見られたのはラッキーです。

 私の位置からでは、駅の建屋が邪魔になり、田原町の駅に停車、発車のシーンは見ることが出来ない…のですが、客扱いを終え、福井に向けて発車していく電車の奏でる音は、まさしくツリカケサウンド!

 2101形は、もとをただせば京福電鉄時代に導入した南海の1201形。そのボディを82年から阪神のジェットカー5231形のボディを購入して載せ替えた、というもの。従って上半身は阪神ジェットカーでも、足回りは南海の旧型のものがそのまま生き続けている…というあいのこのツリカケ車なのです。

 もちろんこの電車の折り返しが来たら乗車して、三国港までツリカケサウンドを楽しみたいなぁ…と思ったのですが、「福井についたら入庫しちゃいます」とは、Y君の御託宣。やっぱり旧型はラッシュが終わると走らないのね。

 因みに、写真の左に福鉄の880形が見えていますが、ここは福鉄のホームから先に伸びている留置線で、さきの疑問、福鉄610形と200形の運用順序変更の謎も解けました。先着した610形は留置線に逃げ、後から来た200形はホームで折り返し…ってことですね。

 さて、次にやってくるえちぜん鉄道三国線の上り電車で、福井方向に戻ります。
26えちぜん田原町駅.JPG


 西別院の駅を過ぎたあたりで「北陸線をオーバークロスしたとき、右側を見ていてくださいね。デキがいますから」とY君の指示。言われるとおり、カメラを構え右側に注目していると、見えてきたのは凸型電機のテキ(デキ、じゃないのね)522改めML522号。
27デキ522-01.JPG


 昭和24年製のこの機関車、やはり除雪用として車籍が残されているそうで、反対側のエンドには、しっかりしたラッセルヘッドが取り付けられています。福鉄のデキ11もそうですが、貨物輸送もなくなり、とうに廃車になってもおかしくないこんな機関車が、命脈を長らえているのもやはり雪国の特殊事情なのでしょう。除雪に活躍する姿を見てみたいものですが、撮影の難易度は恐ろしく高そうだなぁ…。
28テキ522-02.JPG


 福井口に到着。ここは福井からやってきた電車が、三国芦原線と、勝山永平寺線に別れる分岐点。終点福井に向けて走り去る6101形電車を見送ります。
29えちぜん6102福井行き.JPG


 この駅はえちぜん鉄道の拠点駅。ホームからは古びた検修車庫跡の向こうに、新設された近代的な車庫、工場が望めます。
30えちぜん旧車庫.JPG


 凸型電機がいたのはその一番奥、Y君の話では、徒歩でのアプローチは難しいそうで、「今みたいに電車から撮るしか無いんです」
 やはり持つべきは先達なり。

 待つ間もなく、勝山永平寺線の電車が単行でやって来ました。午後には万葉線を尋ねるため、高岡に着いていなければならないので、終点勝山まで往復する時間はなさそうですが、途中の永平寺口までなら行ってこれる…というわけで、電車に乗り込みます。
31勝山行き6108.JPG


 おや、ワンマン表示の電車、なのに運転士さんの他に、バスガイド風のお姉さんが乗務しているぞ。「アテンダント、っていうらしいです」
 なるほど、さきほど田原町の駅で、下りの三国港行き電車の中から、綺麗なおねーさんに艶然と微笑みかけられ、思わずドギマギしてしまった私。そういうことだったのね。
32キャビンアテンダント.JPG


 お姉さんは車内放送や乗客案内を担当。途中駅では接続するバスの時刻まで案内してくれる。自動放送もあるんですが、それに慣れてしまった身としては、肉声放送の温かみが耳に心地よい。
 乗り越し精算をお願いしたら、こんな車内補充券を発行してくれました。
33車内補充券.JPG


 永平寺口に到着。入れ替わりに福井行きの電車が出発していく。
 勝山方面へ去っていく電車。ホームの先、右方向へカーブしているのが、01年6月の(2度目の)正面衝突事故で運休。そのまま廃止となってしまった永平寺線(永平寺方面)の跡。
34勝山へ去る電車.JPG


 下車したホームの目の前にはさらに古びたホームの遺構。こちらは69年に廃止になった、北陸線金津(今の芦原温泉駅)を結んでいた永平寺線のホーム。
35金津方面ホーム跡.JPG


 かつてはこの駅は永平寺-永平寺口-金津間の「永平寺線」と福井-永平寺口-勝山(大野)を結ぶ越前本線の2線4方向が交わるジャンクションだったのですね。

 駅舎につながる永平寺線のホーム。線路は残っていますが、滅多に使われることはなさそうで、レールには赤錆が浮いています。
36本屋と永平寺線ホーム.JPG


 駅の福井寄りの踏切から見た永平寺口駅。10年余り前には、ここで3方向への電車が並ぶ光景が見られたのでしょう。40年以上前だと、4方向の電車も…?
37福井より踏み切りから.JPG


 永平寺口駅の駅舎です。ホームと一体の石積みの土台の上に建てられた、和洋折衷の建物。
38永平寺口駅本屋.JPG


 建築はまったく門外漢ですが、ファサードは仔細に見ると、仏教建築の意匠が随所に取り入れられています。国の登録有形文化財に指定されているそうですが、こじんまりとした中に格調の高さが感じられる素敵な駅舎ですね。
39仏教建築の意匠.JPG


 手入れの行き届いた木のベンチが並ぶ待合室もイイ!
40木のベンチ.JPG


 もうしばらく、この落ち着いた雰囲気を味わっていたいところですが…万葉線が待っています。わずか滞在30分、やってきた上りの福井行き電車に乗車します。
41福井行き6111.JPG


 車両はまたもや愛知環状鉄道からやってきたMC6101形。う~ん、乗り心地もいい電車なんですが…趣味的には昼間時間帯はほぼすべての電車が、この形式の単行運転になってしまう、というのが物足りません。ゼータク言うなって? そうですね。

 福井に到着。あわただしい駆け足でしたが、午前いっぱいかけて福井市内を2社の電車を乗り継ぎつつ一回り。地方都市で、2社3線もの電車を乗り較べられる街って、あんまりないんじゃないでしょうか?
42福井駅到着.JPG


 えち鉄福井のホームのベンチには、恐竜が腰掛け読書中でした。
43ベンチの恐竜.JPG


 …というわけで、私たちは「しらさぎ」で高岡に向かいます。行程的には話が前後してしまいましたが、「北陸電車の旅」の第一回「万葉線」の項に繋がります。

 次回は翌日、金沢の朝からお話を続けたいと思っております。

 
nice!(10)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 10

コメント 5

Cedar

<電車音痴>なんてタイトルはうそですね。ツボを抑えまくった撮影じゃないですかあ~懐かしいなあ福井鉄道。高床の鉄道線電車が路面を行く姿はインタアーバンのイメージそのままでした。
えちてつも、車両こそだいぶ替わったものの駅の佇まいは京福時代そのままですね。
by Cedar (2012-05-18 00:33) 

maipenrai

Cedarさん
 多少なりとも「音感」がよくなっているとしたら、それはCedarさんはじめ諸先輩の薫陶のおかげです。昔の私だったら、インタアーバンなんて概念もわからず、越前武生の駅でヒルネ中の200形を写真に収めて満足していたでしょうね。田原町で、えちてつと福鉄が相互乗り入れする計画があるそうですが、LRTだけじゃなく、えちてつの大型車(特に阪神顔)が併用軌道を走る姿を見てみたいなぁ(コラコラ)。

あるまーきさん
xml_xslさん
 niceありがとうございます。
by maipenrai (2012-05-18 12:13) 

あおたけ

その2〜3と続けて堪能させていただきました。
福井鉄道イイですね〜。私も一昨年に出張で福井へ行った際に、
ハマってしまい、延泊してしまいました。
元名鉄のモ700などもいいですが、
やはりここの魅力はフツーサイズの200形などが併用軌道を
走る姿にありますよね。
クルマ越しのカットが200形の大きさがよく解って好きな写真です。

気になったのは急行色の200形を見かけなかったことですが・・・
どうしちゃったんでしょうね・・・?
by あおたけ (2012-05-18 18:18) 

maipenrai

あおたけさん
 そーなんです。急行色の203編成と、デキを見られなかったのが心残りです…が、再訪の大義名分ができたということでナットクしています。
 鉄道形は200形3編成と、610形が共通運用で3編成使用、1本予備、となっていると聞きました。ということは、急行色203編成は、北府の(思ったよりデカい)木造検修庫の中に、デキと一緒におさまっていたのでしょうか。検修庫の中を覗ける位置まで行かなかったのが、返す返すも残念です。

フジトモさん
 niceありがとうございます。
by maipenrai (2012-05-18 21:19) 

maipenrai

モボさん
gardenwalkerさん
 niceありがとうございます。
by maipenrai (2012-05-19 10:46) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。