みどり色の蒸気機関車~昭和40年一関 [昔鉄(60年代の国鉄・私鉄)]

 蒸気機関車の塗色といえば黒。
 これはニッポンの常識であります。
 最近の各地の動態保存機は、おめかしのためもあってかランボードを白く塗っていますが、まだSLがたくさん残っていた時代はこれすら少数派。
 でも世界を見渡せば、黒一辺倒というのはむしろ例外で、「きかんしゃトーマス」を見れば、イギリスにはいろんな色の機関車があったことがわかるし、中国や東南アジアだと、赤をアクセント的に使っていることが多い。戦前の満鉄のパシナは藍色でしたっけ?

 黒一辺倒だった日本の国鉄でも、それ以外の色の蒸気機関車がなかったわけではありません。戦後間もなく、C59に茶色と濃緑色の試験塗装を施した例があるそうです。1954年というから、私は生まれてはいたけど、まだヨチヨチ歩きの頃ですね…。

 そこでこの機関車。8620形38636号。エンドに警戒塗色が施され、テンダにはでっかいミドリ十字が描かれた入換機仕様ですが、、比較的原型をとどめているハチロク。
01_38636mono.jpg


 実はこの機関車、緑色に塗られているのです。

 昭和40年(1965年)東北本線一関。この年の秋には仙台-盛岡間の交流電化が完成予定で、一ノ関駅の構内も架線柱が林立し、夏にはすでに架線が張られている状態。
 そんな一関の構内で、貨車の入れ替えに励んでいたのがこの機関車です。モノクロでしか撮影していないのが返す返すも残念…とはいっても当時の中坊にカラーフィルムなど手が届くはずもなく…、とにもかくにも緑色。SLですから煤煙に薄汚れてはいますが、ボイラ、キャブ、テンダが深い緑色でなく、山手線のうぐいす色のような明るめの緑に塗られていたのです。
 この写真を撮ったのは昭和40年の5月。初めての一関訪問で、夜行列車でまだ暗いうちに一関到着、だんだん陽が昇ってきて、朝の光のなかでポツンとたたずむこの機関車を見た時は、寝ぼけて夢でも見ているのかと思ったほどです。

 同年8月に訪問した時も38636号は元気に入換に励んでおりました。
02_38636入換中.jpg


 しかし…色の話をするのにモノクロ写真ではあまりにも説得力がない。前回記事のように「誰もが知ってるハワイアンブルー」ってわけじゃないので…。

 そこで人着しちゃいました(爆)。
03_38636人着改.jpg


 緑は…明るすぎるかな…でもこんな感じだったような…下回りは…車輪はともかく、ピストンシリンダ周りは色が塗ってあったかも知れない…ランボードも、警戒色の流れで黄色に塗っちゃったけど、自信がありません。なにより自信がないのがテンダの緑十字。ひょっとしたら赤だったかも…でも赤十字ってわけないよな…などなどまったくもって頼りにならない私(滝汗)。

 そこでネットで画像をググってみたところ、「38636」で出てきたのは三重県の元国鉄機関士さんのホームページhttp://kenfujita.web.infoseek.co.jp/(…これが素晴らしい)にあった画像…ですが、撮影は1967年9月と2年後。エンドの警戒色こそそのままですが、テンダの十字マークは消され、色も普通の黒一色に戻っているようです。この機関車は一関所属のまま1968年4月に廃車になっています。

 この時期の一関にはまだまだ面白い機関車がおりました。テンダの上半分をばっさりと切り落としてしまったD50346。大船渡線の陸中松川にあったセメント工場からの貨物列車に運用されるため、逆向き牽引に便利なようにテンダを切り欠いてしまったようです。一関-陸中松川は近いから、石炭を山盛りに積みこむ必要もなかったんでしょうね。
04_D50346.jpg


 僚機のD50267も同じような切り欠きテンダ。
05_D50267.jpg


 一関機関区のクラは大きな矩形庫でした。D50267の向こうに見えるC58206は大船渡線を気仙沼や盛まで運用されていましたが、東北本線の上り貨物列車では、一関と有壁の間に長い10‰の上り勾配があり、重量列車にはC58が後補機に使われていました。
06_C58206.jpg


 と、いろいろ楽しい機関車が揃っている一関機関区でしたが、当時のヌシはやっぱりこちら。マンモス機D52の従台車を2軸に改造したバークシャー、D62。デカっ!
07_D621.jpg


 一関には1~20まで、欠番なしで20両のD62が配置され、東北本線長町-盛岡の貨物列車中心に運用されていました。実はこの年秋の盛岡電化後も、ED75が足らずにD62はしばらく残るのですが、電気機関車の増備が進んだ翌昭和41年9月末をもって、一関のD62はすべての運用を終え、国鉄の線路上から姿を消していきました。
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Cedar

日本にはトーマスに出てくるような、カラフルなSLが無かったのはなぜでしょう?C59だったか、マルーンとダークグリーンに塗ったのがあったとか?ってSL音痴に言われたくねえよ、って・・・・まったくウソだったらスミマセン。
by Cedar (2011-08-24 23:36) 

あおたけ

私は蒸機には詳しくないのですが、
たしかJR九州で復活したハチロクが一時期、ダークグリーンに
塗られていたことがありましたよね。。。
今では黒に戻されていますが。
by あおたけ (2011-08-25 09:09) 

maipenrai

Cedarさん
 C59の茶色やグリーン塗装は1954年のことといいますから、(省電のオリンピック塗装ほどではないにしろ)SL好きでも実車を見た人は少ないでしょうね。私も遥か昔、雑誌の記事で読んだのを断片的に覚えているだけです。この色のC59モデルがいくつか発売されているらしく(C59/特別塗装、なんてググると画像がいっぱい出てきます)、むしろ模型派の方のほうが、お詳しいかもしれませんね。

あおたけさん
 ホントだ! 赤いカウキャッチャーまでつけて、完全なウエスタンスタイルですね。1993年、遙か九州のこととはいえ、いままで存じませんでした。ご指摘ありがとうございます。
 ところでウエスタン…で気づいたんですが、千葉県下の某有名遊園地に、カラフルな蒸気機関車が4台もいるのを忘れてました。油焚きとはいえ、れっきとした本物の蒸気機関車。子供が小さい頃、よくせがまれて連れて行きましたが、ああいう場所が苦手な私でも、あのアトラクションは好きでした(笑)。
hanamuraさん
 niceありがとうございます。
by maipenrai (2011-08-25 12:00) 

シュウチャン

私も昭和40年8月11日に一ノ関機関区を訪れてこの8620機を撮っています。当時38636機が黒で無いとは今まで知りませんでした。
D50の変形テンダ-、大型D62の迫力、D51ナメクジのラスト№100も居ました。扇形機関庫が無い割には沢山の釜が見られました一ノ関機関区でしたね。





by シュウチャン (2011-08-26 10:09) 

maipenrai

シュウチャンさん
 2枚目の写真を撮ったのが8月4日ですから、一週間違いのニアミスでしたね(一枚目は5月4日の撮影です)。D51といえば、この当時は盛岡にD511がいて、一関にも顔を見せていたし、青森のC611、盛岡のC601…盛岡にはDD511もいて…今思うとゼータクな時代だったとつくづく思います。

銀狼さん
FTドルフィンさん
 niceありがとうございます。
by maipenrai (2011-08-26 17:53) 

伊 謄

 初めまして。
 カラーの蒸機ですが、幸いなことにマレーシアで見かけています。
 ジャッキー・チェンの映画にも出ていた車両なので、映画で見ている方も多いだろうと想います。
by 伊 謄 (2011-09-17 18:39) 

高井純一

 はじめまして、高井と申します。一関の38636のお話、拝読しました。
実は、私、38636のナンバープレートを所有しております。その関係で、書籍や、ネット上のサイトから38636の画像や情報を集めておりましが、
38636の塗色は、「緑色」では無く、ディーゼル機関車に使用されている「朱4号」という色でどちらかというとオレンジ色に近いものでした。
テンダーの十字は緑色でした。
書物に掲載されたカラー写真もあるので、確認できます。
ナンバープレートの地の色は、緑色だったと説明がありますが、所有しているプレートは最終的に黒色が塗られていますが、一部剥げたところから
緑色が確認されます。更に剥げた部分からオレンジ色も露出しているので、車体と同じオレンジ色が塗られていた時期もあるようです。
御必要であれば、画像をお送りしますので、URLをご連絡下さい。


by 高井純一 (2020-12-11 16:46) 

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